尾竹永子 『福島を映す』
尾竹永子 『福島を映す』(約30分)
インタビュー映像(約30分)
英語字幕:本田舞・尾竹永子
BUTOHスナック 世界編 - English Talk(約45分)
日本語字幕:溝端美奈
尾竹永子について
1971年、大学生だった尾竹永子は、土方巽のもとでパートナー、コマと出会いました。ふたりは翌年に渡欧、ドイツでマニア・シュミエルに師事し、欧州各地を公演。帰国後、再び大野一雄に学び、1976年にニューヨークに移住しました。
パフォーマンス・デュオ、Eiko & Koma(エイコ&コマ)は、振り付け、演出、衣装、舞台美術、音響、出演まですべてをふたりで協働するスタイルで、アメリカを中心に多くの国の劇場や大学、美術館、フェスティバルで作品を発表。流れる川の中で踊る作品、そしてインスタレーションをトラックに搭載してのキャラバンなどの独自な企画を多く手がけてきました。
マッカーサー賞(1996‒2001年)、アメリカン・ダンス・フェスティバル賞(2004年)など受賞多数。また米国各地で開催された回顧展にあわせ、彼らの作品をまとめた『Eiko & Koma: 時間は不均衡で空間は空ではない』(2011年)がウォーカー・アート・センターから出版されています。
一方で、尾竹は2014年からソロ活動を開始。今回は彼女のソロ活動の主軸のひとつである『A Body in Places』を本フェスティバルのために再構成した3つのプログラムを配信します。
A Body in Placesについて
ある場所の歴史と現実は演じる者と見る者の心にどのような経験と思索をもたらすのか。身体はその場所に何を残すのか。A Body in Places は、尾竹が劇場以外の場所に身を置き、場所と対話する身体表現の可能性を探るプロジェクトです。
2011年夏、ニューヨークから帰国した尾竹は高校時代の友人とメルトダウン後の福島を訪れました。2014年以来、歴史家・写真家のウィリアム・ジョンストンとともに福島への再訪を重ね、各地で無観客パフォーマンスと撮影を行ないました。
このプロジェクトは撮影した膨大な数の写真をもとに、駅や教会、美術館などで、写真展、尾竹が写真から編集した映像の投影、映像と重ねたパフォーマンスなど、バリエーションを広げながら継続されています。また様々な国のブティック、レストラン、路上などで公演し、アーティストと観客、それぞれの福島との距離を問い続けています。
コラボレーターのウィリアム・ジョンストンは日本の歴史、特に疫病と公衆衛生を専門とするウェズリアン大学教授。原爆と原子力発電についての授業を尾竹と共同で教えた経験をもつ、日本語に堪能な仏教者であり写真家です。
「福島を映す」について
福島への5回の旅でウィリアム・ジョンストンが撮影した写真から選んで自ら編集したビデオ映像を劇場の壁面に映し出しながら行なった、尾竹の1時間のパフォーマンスを25分に編集したダイジェストです。
尾竹は福島の映像に呼応して動き、また映像に身を埋め、あるいは映像に抵抗して静止し、時にプロジェクターを載せた台車を押して、投影する場所を移動します。それは自身の身体を導管として見る者の「ここ・今」と福島とをつなぎ、ある場所を個人が訪れることを反芻する姿です。
TRUプロデューサー溝端俊夫、キュレーター松岡大とのトークも収録。
BUTOHスナック 世界編 - English Talk
「BUTOHスナック 海外編」では、日本に長年在住し、日本文化に深い関心を寄せ、独自の活動を展開する3人のスピーカーを招き、この作品を見た感想などを自由にディスカッションしてもらいます。スピーカーは、ジョセフ・雅翔・アマト(日本文化振興マネジメントディレクター)、グレッグ・ドボルザーク(早稲田大学国際文化研究科教授)、本田舞(TRU公式翻訳者)です。アメリカからもご視聴いただきやすいよう、配信時間を日本時間9:00〜(米国東部時間4月30日20:00〜)に設定。生配信中はチャットをオープンしますので、ぜひご参加ください。英語でのディスカッションですが、チャットの書き込みは日本語も可です。
アーティスト
尾竹永子|Otake Eiko
1970年代の日本で土方巽と大野一雄、ドイツでマニア・シュミエル、オランダでルカス・ホーフィンクに学ぶ。1976年にニューヨークへ拠点を移し、「Eiko & Koma(エイコ&コマ)」として独自の身体表現を追求。ホイットニー美術館、MoMA、ウォーカー・アート・センター等で継続的に作品を発表。アジア人として初めてADFアワード(2004)、ダンス・マガジン・アワード(2006)を受賞、他多数。2014年から始めたソロの活動『A Body in Places』で新たな注目を集めている。
トークゲスト
Photo by 郑渊波
溝端俊夫|Toshio Mizohata
1983年大野一雄舞踏研究所入所。以来大野一雄、慶人の国内外の活動に制作、照明デザインなどで携わる。また、大野一雄舞踏研究所の主催する企画、「百花繚乱」(2007)や「Antony and the Ohnos」(2010)を制作する。1990年代から大野一雄のアーカイヴ資料を整理し、『大野一雄 稽古の言葉』をはじめ、書籍、ビデオ等を多数出版。2004年よりBankART1929の設立に参画し、大野一雄フェスティバルを開催。2016年NPO法人ダンスアーカイヴ構想を設立、アーカイヴ資料を活用して、新たな創作をする「ダンスアーカイヴプロジェクト」を展開中。
Photo by 宮川舞子
松岡大|Dai Matsuoka
2005年より山海塾に舞踏手として参加。『金柑少年』『とばり』『卵熱』『ARC』などの主要作品に出演中。11年より、街を歩きながらミュージシャンとダンサーによるパフォーマンスを鑑賞する「LAND FES」を主催。18年より小田原市にて、障がいのある人ない人共にダンスを創る「スクランブル・ダンスプロジェクト」で講師を務める。様々な舞踏家によるオンラインレッスンプラットフォーム「BUTOH CHOREO LAB」主宰。
English Talk - ゲスト
ジョセフ 雅翔 アマト|Dr. Joseph Gashō Amato
1988年、ニューヨーク大学作曲科博士課程修了。専門は作曲と20世紀現代イタリア作曲家。1995年より日本在住。東アジア音楽の研究・教育を専門とする。2000年、文化庁海外芸術招聘研究員として、財団法人正派邦楽会、正派音楽院で中島靖子、大久保雅礼、中島一子各氏に師事、邦楽を学ぶ。2003年、准師範職格を取得。雅号「雅翔」。同年、横浜インターナショナルスクールに「邦楽プログラム」を設立。2011年、日本芸術文化センターを設立。2017年、特定非営利活動法人日本文化新興マネジメントを設立。
https://www.jcpm.jp/
グレッグ・ドボルザーク|Greg Dvorak
早稲田大学国際学術院教授。専門は太平洋・アジアの歴史学とカルチュラルスタディーズ、アート、ジェンダースタディーズ。オーストラリア国立大学アジア・太平洋地域研究所やジェンダー研究所で比較文化と歴史学を専攻し、2008年に博士号を取得。アートと学術の草の根的ネットワーク「プロジェクトさんご」を創設、来る第10回アジア太平洋アートトリエンナーレの北オセアニア地域を担当するキュレーターである。著書に『Coral and Concrete: Remembering Kwajalein Atoll between Japan, America, and the Marshall Islands』(University of Hawaiʻi Press, 2018; ペーパバック版 2020) 。
本田舞|Mai Honda
フルネームは、バーンズ・ナタシャ・マイ・ホンダ。「TOKYO REAL UNDERGROUND」公式翻訳者。イギリスと日本のハーフ、ロンドン生まれ。8年間バレエを続けた後、演劇に関心を抱き、イギリスでは女優・制作者・シルエットアーティストとして活動。大学院で舞踏と出会い、2016年に大野慶人の舞踏を学びに来日。現在はダンスアーカイヴ構想でも仕事をしながら、舞踏家の上杉満代のもとで稽古を続けている。
http://www.tazburns.co.uk/
Credit
映写されている映像:『福島に行く』
写真
ウィリアム・ジョンストン
編集
尾竹永子
音楽
デイヴィッド・ハリントン(クロノス・クァルテット)
出演
尾竹永子
撮影編集
NPO法人LAND FES
撮影監督
松岡大
スチール撮影
中川達彦
舞台監督
河内崇
照明デザイン・映像
森規幸(balance,inc.DESIGN)
音響
國府田典明
道具制作
呂師(砂組)
プロデューサー
溝端俊夫
主催
東京都
公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
企画運営
NPO法人ダンスアーカイヴ構想